ヨット教室物語・第2067話

前側に指を挟むな!指がウインチに巻き込ま

れて潰されてしまうよ」

小島も慌てて手を戻した。

「雪!先ずはウインチの持ち方から、シート

の引き方、出し方を教えてやらないとね」

隆は、雪に命じた。

それから、レースのスタート時刻が来るまで

の間、何回かタックを繰り返し練習するアク

エリアスだった。おかげで、アクエリアスの

クルーも大分操作に慣れてきていた。

ヨット教室物語・第2066話

三浦さんという同じく今年のアクエリアスの

クルージングヨット教室の生徒が、小島の引

こうとしているジブシートを手伝おうと手前

側にあるシートを持とうとした。

「だめだよ!そんな所からシート持ったら」

隆が、三浦のことを怒鳴った。

「そんな所からシートを引いたら、突風が吹

いたら、そのまま指ごと全部潰されるよ!」

三浦は、慌てて持っていたシートを離した。

「あと、小島くん。ウインチを引く時は、手

ヨット教室物語・第2065話

「ちょうど良いから、あそこの赤いブイとこ

ちらの緑のブイの間を回って、少しタックの

練習をしておこう」

隆は、雪に言った。

「早速先ずは、目の前の緑のブイを回ってか

ら向こうの赤いブイを目指すよ、タック!」

隆が言った。

「それじゃ、小島くんは右側のウインチを回

してくれる。私は左側を担当するから」

雪が小島に指示した。

ヨット教室物語・第2064話

「私も、去年のクルージングヨット教室で始

めたばかりだけなんだけど」

「あ、1年も先にされていたら、大先輩じゃ

ないですか」

小島は、雪に言った。

「そうだよな。1年も先にやっているのだか

ら大先輩だよな。何でも雪に聞きなさい」

隆は、雪のことを無理強いしていた。

「あのさ、まだレースのスタートまだ少し時

間があるから、少し練習しておこう」

ヨット教室物語・第2063話

隆は、中村さんの言葉で思い出した。

「はい。でも、まだ全然わかりませんし初め

てみたいなものです」

そう言ったのは、今年のアクエリアスのクル

ージングヨット教室の生徒の小島だった。

「覚えますので、何でも指示して下さい」

小島は、隆に言った。

「ほら、雪。指示して下さいだってよ、おま

えが指示してやらないとな」

隆は、雪に言った。

ヨット教室物語・第2062話

ら、雪がタックのやり方とか教えないとわか

らないだろう」

「あ、そうか」

雪は、隆に答えた。

「いや、初めてじゃないよな。先週も乗って

いるよな」

中村さんが、いつもレースの時に座っている

キャビンの出入り口に腰掛けながら、自分の

クルーたちに話しかけていた。

「あ、そういえば先週も乗っていたな」

ヨット教室物語・第2061話

「いや、強化年間だな」

隆は、雪に言った。

「はい。そしたら早速タックをしよう!」

隆は、雪に伝えるとアクエリアスの新人クル

ーと共にタック、方向転換させるのだった。

「雪!」

隆は、雪に大声で言った。

「自分1人でタックしたらだめだろうが」

「え、はい?」

「彼らは皆、今日初めてヨットに乗るんだか

ヨット教室物語・第2060話

「1年も経って、まだ船の風上がどっちかわ

からないなんて最悪だぞ」

今朝のマッキーの舫いを取った時のことを、

まだ覚えていた隆だった。

「香代はもちろん、陽子や瑠璃とか皆、成長

してきているのに、雪だけいつまで経っても

成長できていないじゃん」

「まあ、そうだけど」

「だから、今年の目標は雪の強化月間だから

「強化月間なんだ」

ヨット教室物語・第2059話

隆は、雪のことを勝手に大げさに紹介した。

「なんで、私なの?」

雪は、隆に聞いた。

「香代ちゃんはこっちに来れないだろうけど

香織ちゃんとか瑠璃ちゃんとか、私よりもヨ

ットのことわかっている優秀な去年の生徒い

っぱいいるじゃないの」

雪が隆に文句を言った。

「だから、雪のことを呼んだんだよ」

隆は雪に答えた。

ヨット教室物語・第2058話

アクエリアスがラッコから離れると、すぐに

隆は中村さんからラットを任された。

「彼はベテランだからね。彼の元でレースに

参加するとヨットのことを色々わかるぞ」

中村さんは、隆のことをアクエリアスの今年

のクルージングヨット教室の生徒たちに紹介

していた。

「彼女は雪といって、君たちと同じクルージ

ングヨット教室の去年の生徒、君たちよりも

1年先輩だから、何でも雪に聞くと良いよ」

ヨット教室物語・第2057話

「私が乗るの?」

「嫌か?」

「別に嫌じゃないけど」

「それじゃ、雪が一緒に乗りなさい」

そう言うと、隆は雪と一緒にアクエリアスへ

乗り移った。

「じゃ、行ってきます!」

隆が言うと、

「行ってらしゃい!頑張ってきてね」

麻美子が手を振りながら返事した。

ヨット教室物語・第2056話

「え、私?今年も私が乗るの?」

サイドデッキでクラブレースの旗を持ってい

た陽子が、隆に返事した。

「陽子ちゃんは、今は旗を持っている仕事し

ているからね」

麻美子が隆に言った。

「麻美子に断られてしまったか」

隆が呟いた。

「ああ!雪、雪が一緒に乗ろう!」

隆は思いついたように、雪のことを誘った。

ヨット教室物語・第2055話

「隆くん、一緒に乗ってくれないか」

アクエリアスの中村さんは、ラッコの隆に声

をかけて来た。

「どうしました?」

「いや、うちのヨットは皆、今年からクルー

ジングヨット教室を始めたヨットレース初心

者ばかりで、まだ操船ができないから」

中村さんは、隆にヘルプを求めてきた。

「どうする?陽子」

隆は、陽子に聞いた。









ヨット教室物語・第2054話

「朝、俺とその話をしていたじゃん。ラッコ

はレースに参加しないで審判するって」

隆が明子に言った。

「そうだった?なんか忘れちゃった」

明子は、笑顔で隆に答えた。

「大丈夫よ、初めてのヨットレースだものね

何するかなんて忘れちゃうよね」

麻美子が明子の頭を撫でながら言った。

アクエリアスがコミッティーボートのラッコ

に近づいて来ると、右舷側に横付けした。

ヨット教室物語・第2053話

麻美子がバインダーの用紙に書かれている内

容を明子へ説明した。

「ラッコって書いてないよ」

「だってラッコはレースに参加しないよね」

麻美子が、明子に答えた。

「え、ラッコって参加しないの?」

「うん。ここにいて、皆がちゃんとレースを

しているか審判するのよ」

「そうなんだ」

明子は驚いていた。

ヨット教室物語・第2052話

って来ると、瑠璃子に手渡した。

「10分前とか5分前の旗は誰がやる?」

麻美子は、ボートフックにレース旗を結びな

がら、皆に聞いた。

「それじゃ、私がやろうか」

陽子が麻美子からボートフックを受け取る。

「何をするの?」

明子が、瑠璃子の持っているバインダーを覗

き込んでいる麻美子に聞いた。

「ここにレースの参加艇が書いてあるのよ」

ヨット教室物語・第2051話

「大丈夫よ、私って意外に力ある方だし」

瑠璃子が笑顔で答えた。

「おおっ、それじゃ瑠璃子にアンカーを上げ

るのは全部任せるか」

「うん!任せて」

瑠璃子は、隆に答えた。

「瑠璃ちゃん、アンカーの前にレースの記録

をお願いね」

麻美子が、艇長会議でもらって来たクラブレ

ースの記録帳が挟まっているバインダーを持

ヨット教室物語・第2050話

「手動でアンカーを打つのも簡単だろう?」

「うん、ぜんぜん楽」

陽子は、隆に答えた。

「これなら、別にフォアに付いている固定の

アンカーを使わなくても良いかもね」

「でも、今度、海底から上に上げる時がなか

なか重くて大変なんだよ」

隆は、陽子に答えた。

「そうか、海に落としたら、上に上げなけれ

ばならないのだものね」

ヨット教室物語・第2049話

「隆さん、ここら辺で良いかな」

香代は、ラットを操船しながら隆に聞いた。

「良いんじゃないの」

隆は、周りを走っているレースの参加艇を確

認しながら頷いた。

「アンカーを打ちます!」

香代は、皆に伝えると、陽子と瑠璃子はデッ

キ上に準備しておいたアンカーを打った。

アンカーが海の底にがっちり引っかかると、

ラッコはその場の海面に停船した。

ヨット教室物語・第2048話

てしまって、さらに動けなくなっていた。

雪が迷っている間に、陽子が来てさっさと風

上側の舫いロープを結び終わっていた。

「まあ、こっちで良いか」

雪は、陽子が反対側の舫いロープを結んでく

れたので、最初に受け取った舫いロープを急

いで初めの予定通り結んだのだった。

「雪って、まだ風上と風下の違いが良くわか

っていなかったのか」

少し呆れてしまった隆だった。

ヨット教室物語・第2047話

雪が舫いロープを受け取ると、クリートに舫

い結びで結んだ。

さすがに、去年のクルージングヨット教室生

の雪は、1年を経っているので、もう舫い結

びの結び方は完璧にマスターしていた。

「雪!風上の舫いから結んであげなきゃ」

隆に言われて、風上ってどっちだったかと一

瞬動作が止まってしまった。

「風上だよ」

再度、隆に言われても、どっちが風上か迷っ

ヨット教室物語・第2046話

隆は陽子たちと先にポンツーンへ向かった。

「あ、船がこっちに来る」

隆たちとポンツーンに向かった雪は、ポンツ

ーンに海上からやって来たマッキーの姿に気

づいて、舫いロープを取ってあげるために、

先にポンツーンへ走って行った。

「舫いをお願い」

マッキーの原田さんが、バウの船上から雪に

向かって、舫いロープを投げた。

「はーい」