「そうか。それじゃ、ラッコのキャビンの中
でお昼ごはんするしかないな」
香代が、横浜マリーナの船を上下架するため
のクレーンが設置されているスロープに、ラ
ッコを挿入すると、横浜マリーナ職員がクレ
ーンで上げてくれた。
「今日は、お早い帰りですね」
職員は、隆に声をかけた。
「午後からヨット教室の生徒の引き取りで」
隆は、職員に返事した。
「そうか。それじゃ、ラッコのキャビンの中
でお昼ごはんするしかないな」
香代が、横浜マリーナの船を上下架するため
のクレーンが設置されているスロープに、ラ
ッコを挿入すると、横浜マリーナ職員がクレ
ーンで上げてくれた。
「今日は、お早い帰りですね」
職員は、隆に声をかけた。
「午後からヨット教室の生徒の引き取りで」
隆は、職員に返事した。
「そしたら、お昼ごはんは船台の上に載った
ラッコのキャビンで食べる感じ?」
麻美子が隆に聞いた。
「うん。それかクラブハウスの2階の厨房設
備で料理して、クラブハウスで食べるのでも
良いけど」
「クラブハウスの2階は、クルージングヨッ
ト教室をやっているから場所が空いていない
んじゃないの」
麻美子が隆に言った。
「せっかく香織がフェンダーとか準備してく
れてはいたけど」
香織や瑠璃子が、ラッコを横浜マリーナのポ
ンツーンに着岸するため、舫いロープやフェ
ンダーを船体サイドに取り付けていた。
「今、マリーナのクレーンが誰も上下架して
いなくて空いているし、上架してもらおう」
「そうね」
陽子も隆に頷いた。
香代は、ラッコをクレーンに入れた。
横浜へ戻ろう」
隆が、香代に言った。
香代は、観音崎の灯台の前辺りまで行くと、
そこでタックをして横浜へ戻った。
「今、クレーンが空いているから、先にヨッ
トを陸上に上げてしまおうか」
隆は、ラットを握っている香代に言った。
ラッコは、良い風の中、観音崎まで走って来
てから、横浜マリーナまで戻って来ていた。
「せっかくフェンダー付けたけどな」
「うん!」
麻美子に聞かれて、香代は大きく頷いた。
「でも、お昼過ぎからクルージングヨット教
室の生徒さんの配属でしょう」
香織が麻美子に言った。
「そうだった。ちょっと浦賀でお昼を食べて
いる時間は無いな」
隆が答えた。
「そしたら、観音崎まで行ったら、せっかく
走っていて残念だけど、そこでUターンして
「今日は、けっこう良い風が吹いているせい
か、重たいラッコでもどんどん進むな」
隆は、良い風を受けて滑るように進んでいる
ラッコのことを言った。
「だって、もう猿島の近くまで走って来てし
まっているものね」
横須賀の猿島の真横までたどり着いていた。
「浦賀まで行けちゃうかも」
香代がラットを操船しながら言った。
「そしたら、カレーを食べてこようか」
「これから、クルージングヨット教室でうち
に配属される子には、ぜひそうやって香代が
教えている姿が見てみたいな」
隆は、香代に言った。
「大丈夫よ、できるよね」
麻美子は、香代の横顔を見ながら頷いた。
「そういう人に指示するのって、俺は雪が意
外に得意そうに思えるんだけどな」
「私?」
雪は、隆に聞き返していた。
「でもさ、マストとか艤装するときに、香代
ちゃんが割りかし先輩らしく、子供たちに教
えていたのを私は知っているよ」
陽子が隆に伝えた。
「そうなんだ」
「その姿を見たときに、いつも控えめな香代
ちゃんが、ああ、そんな風に人に指示するこ
ともできるんだなって思ったもの」
「おお、そんな香代の姿って俺も見たいな」
隆は、陽子に返事した。
隆は、ラットを握っている香代に言った。
「そうね」
麻美子は、横で操船している香代の頭を撫で
ながら、隆に頷いた。
「確かに、香代ちゃんって人に指示するのと
か苦手かもね」
瑠璃子が先週、ジュニアヨット教室でのこと
を思い出しながら頷いた。
「子供たちに教えるの苦労していたよね」
香織も頷いた。
「うん」
香代が答えて、雪と瑠璃子がジブファーラー
を解いて、ジブセイルも出した。
メインとジブのセイルが風を孕んで、ラッコ
が走り始めた。
香代はエンジンを停止した。
「香代、おまえはヨットの操船は上手になれ
たよ。後はセイルを上げたりなんかする時に
ちゃんと周りの人に声をかけられて指示を出
せるようにならないとだめだな」
「メインセイルを上げるか?」
隆は、ラッコのサイドデッキからラットを握
っている香代に聞いた。
「はい」
香代が頷いたので、陽子や香織もサイドデッ
キにやって来て、メインセイルを上げた。
「ジブも出す?」
コクピットにいた雪が隆に聞くと、隆は香代
の方を指差した。
雪は後ろを振り返った。
「なんでよ、麻美子の子供の話だろう」
「別に良いじゃない。仕事の予定とかあえば
うちの子供のイベントに、隆もヨットのこと
とかを教えながら参加してあげてよ」
麻美子が、隆に言った。
「麻美ちゃんの子供なら、隆さんにとっても
きっと可愛いと思うよ」
「そうかもな。まあ、仕事の都合が合えば、
麻美子の子供だけど付き合ってやるかな」
「うん。そうしてあげてよ」
隆は、ジュニアヨット教室で時々あるイベン
トについて説明した。
「車の屋根に、子供が乗るヨットを載せて、
子供と一緒に遠征先のヨットレース会場に行
ったりするから、その時は全国の民宿とか泊
まったりするんだ」
「そうなんだ」
麻美子は、隆に返事した。
「その時は、隆も一緒に、子供を連れて遠征
に付き合ってくれる?」
「良いんじゃないの」
隆は、麻美子に答えた。
「麻美子の子供なんだから、麻美子が通わせ
たいのならば、通わせたって」
「そうよね」
「ジュニアヨット教室ってさ、各地域の子供
同士で全国でヨットレースするんだよね」
隆が、麻美子に言った。
「そういう時は、子供だけじゃなくて親も付
き添いで各地へ遠征に行くんだよ」