ヨット教室物語・第1867話

「大人があるのに子供が無いのか!」

陽子が、隆の真似をした。

「ああ、それは理事会の時に」

麻美子は、陽子から片桐一郎のヨット教室立

ち上げ時に発言した隆の言葉を聞いた。

「へえ、隆って顔に似合わず、意外に良いこ

としたじゃないの」

麻美子は、隆のことを褒めた。

「それじゃ、そのジュニアヨット教室に、子

供を通わせても良いよね?」

ヨット教室物語・第1866話

「ジュニアヨット教室は、絶対に麻美子に合

っているよ」

隆が、麻美子に言った。

「そうだよね。私に子供ができたら、絶対に

自分の子供を通わせるわ」

麻美子は、隆に答えた。

「そういえば、ジュニアヨット教室って、隆

さんが立ち上げに貢献したんだって?」

陽子が、隆に聞いた。

「貢献なんて何もしていないよ」

ヨット教室物語・第1865話

「柄杓の中のクラゲがびっくりしちゃうから

あんまり揺らしたらだめだよとかね」

「優しくしてあげようねって言ったら、キッ

トカット食べるかなって、自分で持っていた

キットカットをクラゲに上げたり」

陽子が隆に説明した。

「いやーん、可愛い!キットカットをクラゲ

にあげたんだ」

麻美子は、陽子の説明を聞いて、嬉しそうに

はしゃいでいた。

ヨット教室物語・第1864話

「私が柄杓で海のクラゲを掬ってあげた

ら、それがきっかけで、なんだか追いか

けっこ始めちゃったの」

「男の子たちが、女の子にクラゲで威し

たりしてるのよ」

陽子たちが、先週の事を隆に説明した。

「へえー、麻美子が絶対に喜びそうなことを

していたんだ」

「女の子のことをクラゲで追いかけ回したり

しているから、だめだよとか」

ヨット教室物語・第1863話

瑠璃子が答えた。

「ヨットの事というか、艇庫からヨットを出

して艤装のやり方とか、一緒に運んであげた

りしただけだから」

陽子が隆に補足した。

「クラゲ事件とかね」

「クラゲ事件?」

隆は瑠璃子に聞き返した。

「私のせいなんだけどね」

陽子が、隆に言った。

ヨット教室物語・第1862話

「生徒の明け渡しは、お昼過ぎだから、それ

まで少しだけ海に出てこようか」

隆が皆に伝えた。

「了解!」

瑠璃子は隆に答えてラッコの艤装を終えた。

「先週は、瑠璃子もジュニアヨット教室の先

生をやったのか?」

隆は、瑠璃子に聞いた。

「ちゃんと教えられたの?」

「教えられたよ!流石に小学生相手だから」

ヨット教室物語・第1861話

「先週の香織ちゃんすごかったな」

陽子が、隆に言った。

「私たちは、ただ子供たちが可愛いってだけ

で教えていたけど、香織ちゃんは、皆をきち

んと誘導、指導しっかり出来ていたもの」

「そうなんだ」

隆は、陽子に答えた。

「さすが学校の先生だな。今年のヨット教室

の生徒は、香織に任せるか」

隆が、陽子と話していた。

ヨット教室物語・第1860話

「そうなんだ」

瑠璃子は隆に答えた。

「今年の生徒は、俺は何も教えないから、瑠

璃子とか皆で教えてやれよ」

隆は、瑠璃子や香代たちに伝えた。

「そうなんだ。確かに、人に教えることで、

自分たちの勉強にもなるものね」

瑠璃子は、隆に言った。

「先週、子供たちに教えてそれ実感したわ」

香織が言った。

ヨット教室物語・第1859話

「お昼過ぎから生徒の明け渡しだってさ」

「え?クルージングヨット教室のこと?」

「ああ」

今日は、4月上旬で新しく始まる横浜マリー

ナのクルージングヨット教室初日だった。

「また、新しい生徒さんが4人来るの?」

「4人も取ったら、ラッコがいっぱいになっ

てしまうから」

隆は、瑠璃子に答えた。

「今年は1人だけ生徒を取った」

ヨット教室物語・第1858話

「私、まだ誰とも結婚もしていないんだけど

子供ってどういう意味よ」

麻美子は1人呟いた。

「多分だけど、それって照れ屋の隆さんのプ

ロポーズみたいなものじゃないかな」

陽子が麻美子に言った。

「えっ」

麻美子は、陽子の言葉に戸惑っていた。

「そういえば、麻美子!」

隆が船台の上のラッコから麻美子を呼んだ。

ヨット教室物語・第1857話

「教えたいっていうか、私は子供が好きだか

らさ。楽しそうだなって」

麻美子は呟いた。

「ジュニアヨット教室は、麻美子の子供がで

きた時に、その子のことを入学させれば良い

じゃん」

「そうだね」

隆は、ラッコのデッキに上がって、香代や瑠

璃子たちと艤装をしていた。

「私の子供って、何よそれ」

ヨット教室物語・第1856話

麻美子は、心からそう思っていた。

「何、麻美子はヨットを教えたかったのか」

隆が麻美子に聞いた。

「教えたいって、私じゃヨットのことあまり

知らないし、教えられないよ」

「まあ、麻美子じゃヨットのことを人になん

か教えられるわけないよな」

隆が笑った。

「何よ、その言い方、憎たらしいんだから」

麻美子は、隆の頭を小突いた。

ヨット教室物語・第1855話

「え、何それ?」

麻美子は、先週の横浜マリーナでのことを、

皆から聞いて羨ましがっていた。

「それじゃ、先週は子供たちと一緒に、皆で

ヨットに乗ったの?」

「うん。まあ、子供たちと乗ったというか、

ボートから指導したというか」

陽子が麻美子に答えた。

「良かったね。私も先週、皆とヨット教室の

先生をしたかったな」

ヨット教室物語・第1854話

「遊ぶのは、片付けが終わってからよ!」

香織の一喝で、皆はおとなしくなって、ヨッ

トの片付けに戻っていた。

「さすが、先生!」

陽子は、香織に感心した。

「ね、これどうしよう?」

男の子が柄杓の中のクラゲを陽子に見せた。

「それは、海の中に帰してあげましょう」

陽子は、柄杓のクラゲを海の中に戻した。

「クラゲさん、バイバイ」

ヨット教室物語・第1853話

横にいた香代に、陽子が言った。

「お姉ちゃん、ほら」

男の子が香代の頬にクラゲを擦りつけた。

「きゃあああー!」

香代も思わず叫んでしまった。

男の子も、女の子もクラゲで遊び始めてしま

って、収拾がつかなくなってしまった。

「コラッー!」

突然、香織の大声が少年少女たちに響いた。

「今はヨットのお片付けの最中でしょう!」

ヨット教室物語・第1852話

の子は面白がって、柄杓を持って女の子たち

を追いかけ回していた。

「俺もやろう!」

他の少年たちも、自分たちが乗っていたヨッ

トから柄杓を持ってくると、海面に浮かんで

いるクラゲを掬い始めた。

「ほら、クラゲだぞ!」

他の少年たちも、柄杓のクラゲを持って、女

の子たちを追いかけ回し始めた。

「え、もしかしたら私のせいかな」

ヨット教室物語・第1851話

陽子は、柄杓を海面に入れると、クラゲを掬

ってみせた。

「ほら、クラゲさん捕まえた!」

陽子が少年に見せると、少年たちは嬉しそう

に柄杓の中のクラゲを眺めていた。

「何をしているの?」

やって来た女の子に、少年の1人が柄杓を持

って近づけた。

「きゃあああー!」

女の子が柄杓のクラゲから逃げ回るので、男

ヨット教室物語・第1850話

「あ、本当だ!」

陽子が少年に頷いた。

「あれ、捕まえてみたいの」

「捕まえたいのか」

陽子は、ポンツーンの周りを見渡した。

「あ、ヨットがひっくり返った時に、水を掻

き出す柄杓があるじゃない。あれをちょっと

持ってきてくれる?」

「はい、お姉ちゃん」

少年がヨットから柄杓を持ってきた。

ヨット教室物語・第1849話

「なになに、どうかしたの?」

1日の練習を終えて、生徒たちは皆、ポンツ

ーンに戻ってきていた。

これからヨットを陸上に上げて、艤装を解除

して片付け始めるのだったが、ポンツーンの

周りに少年たちが集まっていた。

「なんかいるの?」

陽子が覗きこむと、海面にクラゲがたくさん

浮かんでいた。

「すごいたくさんのクラゲ!」

ヨット教室物語・第1848話

片桐一郎は、香織に言った。

「今日、皆でジュニアヨット教室の先生をし

た話、麻美ちゃんに言ったら、ぜったい羨ま

しがるだろうな」

香代が言った。

「ああ、そうだよね」

雪が、香代に頷いた。

「ヨット教室の先生した話は、香代ちゃんに

任せたからね。麻美ちゃんが羨ましがらない

ように上手に話すのよ」

ヨット教室物語・第1847話

「はい!」

陽子たち皆、片桐一郎に頷いていた。

「彼は面倒見が良いものな」

「ええ」

陽子が、片桐一郎に頷いた。

「私、配属はアクエリアスだったんです」

香織が、片桐一郎に打ち明けた。

「でも、卒業してからラッコに乗りたいって

言って、ラッコに乗るようになりました」

「良い判断したね」

ヨット教室物語・第1846話

「だよね」

香織と瑠璃子は頷きあっていた。

「私たち、去年の大人のクルージングヨット

教室の生徒だったんです」

「ほう、なるほど。それで、ラッコさんに配

属されたんだ」

「はい!」

香織も、他の皆も一緒に頷いた。

「君たちラッキーだよ。隆君のところへ配属

になったのは」

ヨット教室物語・第1845話

それは良いって賛同してくれたんだ」

片桐一郎は、陽子に言った。

「いや、大人があるのに、なんで子供はだめ

なんですかって、理事に直接交渉してくれた

のは、彼だったな」

「へえ、そうなんだ」

「今度会ったら、隆さんに聞いてみよう」

瑠璃子が言った。

「ぜひ、ジュニアヨット教室を立ち上げた時

の話も、隆さんから聞いてみなきゃ」

ヨット教室物語・第1844話

げる時、彼にも理事の説得とかいろいろ助け

てもらったんだよね」

「そうだったんですか!」

片桐一郎から話を聞いて驚いていた。

「横浜マリーナに大人のためのクルージング

ヨット教室ってあるだろう」

「ええ」

「大人のためのヨット教室があるのなら、子

供のためのヨット教室だって、あっても良い

だろうって、俺が発案したら、彼が真っ先に

ヨット教室物語・第1843話

「はい、麻美ちゃん、麻美子さんのこともご

存知なんですか?」

陽子が、片桐一郎に聞いた。

「うん。彼女は、ヨット教室の子とも仲良く

て、先生もやりたいって言っていたけど」

「そうですね、麻美ちゃん子供好きだから」

「でも、彼女を隆君から離すわけにはね」

「ああ、そうですね」

陽子は、片桐一郎に大きく頷いた。

「実はさ、このジュニアヨット教室を立ち上

ヨット教室物語・第1842話

瑠璃子が片桐一郎に香織のことを紹介した。

「へえ、それでヨットもやっているんだ」

「はい」

「うちのヨット教室も、毎週やっているから

ぜひヨットの先生になってほしいな」

片桐一郎は、香織に言った。

「君たちって、隆君のヨットだよね?」

「ええ、ラッコです」

陽子が答えた。

「ラッコか。麻美子さんとも知り合い?」

ヨット教室物語・第1841話

あげたりと色々指導するのだった。

「もう少し、ラダーを引っ張って、シートも

引いてあげようか」

香織が、生徒たちに教えていた。

「やっぱり香織ちゃん、学校の先生だけあっ

て教え方が上手いね」

瑠璃子が、香織のことを褒めた。

「え、何。彼女は学校の先生なの?」

片桐一郎が瑠璃子に聞いた。

「横浜市の養護学校の先生なんですよ」

ヨット教室物語・第1840話

香織は、メインシートの持ち方が間違ってい

る子のシートの持ち方を直してあげてから、

舫いロープを外して、海に送り出した。

生徒たち全員がOPに乗って、海に出航して

いくのを見送っていた。

「それじゃ、私たちも出ましょうか」

片桐一郎の操船する小型のテンダーボート、

モーターボートに乗って海上に出る。

海上で、生徒たちが乗っているヨットを確認

して、乗り方が違う子には、乗り方を教えて

ヨット教室物語・第1839話

ちを振り分けて、海に出航させてあげるとい

うものだった。

「大丈夫?ティラーをちゃんと持った?メイ

ンシートは持っている?」

OPに乗り込んだ生徒たちに声をかけてあげ

て、準備ができた艇から順番に舫いロープを

外して、海に送り出してあげるのだった。

「ほら、そのメインシートが体に絡まってい

るよ。ちゃんと持たないと手を怪我しちゃう

からね」